3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,上告人らの請
求を棄却した。
(1) 本件受益証券に係る一部解約金支払請求権は,本件信託契約について一部
解約がされることを条件として発生するもので,その解約権は,販売会社である被
上告人ではなく,委託者であるB社が有する。
上記の一部解約金支払請求権は,受
益者から解約実行請求がされただけではいまだ発生せず,B社による解約権の行使
によって初めて発生するものである。
被上告人は,本件委託契約に基づき一部解約
金の支払等の事務を行うべき義務を負っているが,その義務は,B社に対するもの
であって,受益者に対するものではなく,本件信託契約の当事者でもない被上告人
が,受益者に対して,本件信託契約の一部解約に伴う一部解約金の支払義務を負う
ものではない。
被上告人は,B社に対し,解約実行請求があったことを通知すると
ともに,一部解約金がB社から交付されたときにこれを受益者に交付する義務を負
うにすぎず,一部解約をすることができる適格に欠ける。
受益者が被上告人に対し
て解約実行請求を行った場合に,被上告人がB社に解約実行請求があったことを通
知する義務を負い,その通知を受けたB社が一部解約を実行する義務を負うとして
も,いまだB社が解約をしていない段階で一部解約の効力が生ずると解することは
できない。
したがって,Aは,被上告人に対して一部解約金支払請求権を有するものではな
いから,D又は上告人らにおいても,被差押債権として,一部解約金支払請求権を
取得することはなく,本件差押命令等に係る差押えの権能として,B社に対して解
約の意思表示をすることもできないし,被上告人に対して解約実行請求をすること
もできない。
(2) 上告人らは,被上告人が販売会社としての義務に反して,本件解約実行請
求があったことについてB社に通知することを怠りながら,一部解約金の交付がな
い以上支払に応じられないと主張するのは,クリーンハンドの原則に反する,ある
いは,故意に解約の実行を妨げたものとして民法130条が適用されるべきである
と主張するが,上記のとおり,受益者であるAから解約実行請求があっても被上告
人が一部解約金の支払義務を負うものではなく,D又は上告人らも被上告人に対し
て解約実行請求をすることができないから,被上告人が故意に一部解約の実行を妨
げたものと評価することはできず,上記主張はいずれも失当である。
4 しかしながら,原審の上記判断のうち,以下の当裁判所の判断に反する部分
は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。